では、今まで検討してきた【考えられる争点】をもとに、野村特別顧問の見解について検討してみましょう。
・労組の違法行為を調べるにあたり、適切な質問項目か
→twitterをみるかぎり、具体的な言及はない。
→もっとも、今までは「リスト問題」のみを対象としているのかと思っていたが、「実質的なヤミ専従が市議会で指摘され、労働組合側もその一部を自認した」事実を受け、「職場における違法行為の有無と市職員の正常な勤務に対する影響等について」を調査しているらしい。
→そうすると、目的が広がるので、その手段たる質問事項の範囲も広くなるかもしれない。
→個人的には、アンケート用紙に調査の目的・背景をもっと具体的に記載した方がよかったのでは、と思う。
・不適切な質問項目があるとすれば、それは不利益性があるか
・不当労働行為にあたるか
→報道によれば、違法性を認めたわけではないらしいので、否定しているとみられる。
→「我々が第三者として調査を行う旨を組合の代表者に説明していたにもかかわわず、組合側は市長による不当労働行為と位置付けて労働委員会に救済の申し立てをしました」と述べているので、第三者機関が実施主体なら、不当労働行為にあたらないという認識をもっていると考えられる(もっとも、この点については「市長の業務命令でやってるんだから、主体は市長なんじゃないの?」「仮にそうでないとしても、不実な回答には処分もありなんだから、実質的には市長が知ることになるのでは?」などの派生論点が生じうる)。
・思想良心の自由やプライバシー権の侵害にあたるか
・本件アンケートは政治活動参加への有無・内容など外部的行為を尋ねるにすぎず、内心・信条を了知できないのではないか
・政治活動参加への有無・内容は「外部的行為」だが、「労組はどの程度影響力を持つと思うか」などは、内心の探知といえるのではないか
・内心、信条にあたるとしても、本件は外部窓口(第三者機関)に対する開示だから問題ないのではないか
→直接の言及はない様子。
→もっとも、「橋下氏が調査すれば、憲法に抵触する可能性がある」と説明していたとの報道もあるから、論点自体については認識していたとみられる。
・内心の自由は絶対的に保障されるので、たとえ外部窓口といっても、その制約はゆるされないのではないか
→回答なし(しかし、実施主体の第三者性を強調している点からみると、この点には否定的立場ではないかと推察される)。今後の明示的回答が望まれる。
・回収方法は十分か(所属部局を通じて外部窓口提出しているが、労組加入等の情報を見られるおそれはないか)
→「今回のアンケートで問題になっている市長の文章には、アンケートの回答内容は野村しか見ない旨が明記されています。この文章には、違法行為が発見された以上、実態解明が必要なので、野村に調査を依頼したから、正確に回答するようにとの趣旨が書かれています」。前段はそのとおりだと思うが、後段は文意が私にはよくわからない(市長の業務命令って明記してあって、橋下市長の署名も添付されていたように思いますし、処分権限は野村特別顧問ではないはず)。
・本アンケートは外部の「特別チーム」だけが見るとされているが、アンケート内容により回答者に対し処分を行うとされている以上、結局は市当局がアンケート内容を知ることに変わりはないのではないか
→回答なし。この論点は、日弁連の指摘によるものなので、おそらく野村特別顧問も認識しておられるだろう。そのため、特に回答が望まれる。
・アンケート実施により得られる成果はどのようなものか
→「一部の組合では、組合幹部が市の職員人事に関わりを持っているとの情報や、組合役員が勤務時間内に選挙活動等を行いつつ若い組合員に勤務の代替を強いているといった情報などが寄せられています」「こうした若い市職員の勇気ある内部告発に込められた悲痛な叫びを受けて、我々第三者調査チームは、それが真実なのか否かを解明することに全力を注いでいます。仮に真実ならば、実態の公表を通じて組合に反省を迫ることこそが、苦しみを抱えた内部告発者らを救う道だと考えるからです」「万一こうした情報が、内部告発を装った単なる誹謗中傷にすぎないのであれば、そのことを公表することによって、組合の名誉を挽回することも必要だと考えています」「万一内部告発が真実だとするならば、その違法な部分を取り除き、堂々と活動できる労働組合に戻っていただきたい」
・「より穏当な方法」としてどんなものが考えられるか
→「各所の実地調査とヒアリングを波状的に行っており、アンケートはその一部」。告発の受付も行っている様子。ほぼ全職員を対象にアンケートを実施するよりは、こちらの方が「穏当」であろう。
→そうすると、併用はどこまでゆるされるかという論点に移りそうである(実質的に検討事項は変わらないだろうけれど)。
→また、「アンケートは実態解明の手段にすぎませんので、組合側が自発的に調査に協力してくれるのであれば、目的は達せられます」と述べているが、組合にどのくらい調査協力要請を行ったのか、も論点になりうる。
・川崎市政党機関紙購読調査事件で東京高裁は、実施に伴う負担と得られた成果を比較考量しているが、この手法は妥当か
・公務員の政治的行為に関する猿払事件判決は、目的、目的と手段の関連性、得られる利益と失われる利益の均衡という3点から、制約の許容性を検討する。この猿払基準は、団結権への制約が問題となりうる本件にも適用されるか
→このへんは裁判所の判断なので、回答がなくても検討に差し支えないだろう。
(via inf)
(via pdl2h)
→もっとも、「(調査を)橋下氏が調査すれば、憲法に抵触する可能性がある」と説明していたとの報道もあるから、論点自体については認識していたとみられる。